演劇ドラフトグランプリ 感想

配信で演劇ドラフトグランプリを観ました。

 

発表された時から楽しみにしていたイベント。実力派の役者と演出家の夢の共演。そして、推しである染谷さんがどんな人を選び、物語を作るのか、頭の中を知れるようでワクワクしていました。

リアタイは間に合わず、会社を退勤してふとTwitterをみたら染谷さんのつぶやきで結果を知ってしまい…笑 若干先入観のある状態でみてしまいましたが、全劇団の感想です。

 

IDCheckers 「キセキの男たち」

その名の通り、童顔というか若さを感じさせるイメージの人が多い人選。それが題材である高校野球と上手くはまっていた。円形のステージも球場と結びつく。

冒頭の韻を踏んだ言葉遊びのシーンでグッと掴まれた。そして球児たちの熱さ。毎年高校野球を楽しみにしているので、自然と感情移入してしまう。奇跡というと、ドラマROOKIESそして主題歌のGReeeeNのキセキを思い出してしまう世代なのもある。奇跡と高校野球ってわりと想像しやすいテーマだけど、ほんのり感じる鬱屈さが効いてて面白かった。運命から逃げ出して、立ち向かうことが奇跡。トップバッターにふさわしい、心熱くなる良い作品でした。

てっきり荒牧くん中心で行くのかと思いきや、定本くんがメインで裏切られた。定本くん、好演。サクセス荘のイメージが強くてクレバーで淡々とした印象だったけど、熱いお芝居も魅力的。女房役の赤澤くんもバカ正直で真っ直ぐなところがとてもかわいかった。荒牧くんはなんでも器用にこなすけど、凄みを感じさせる芝居が上手くて、ピリッとしたスパイスになっていた。

審査員の「主人公が誰かを明確にする」という指摘は、マンガに精通する人だからの視点で面白かった。最後の挨拶で「武道館の砂を持って帰ります!」と銀テープを回収するチームがかわいかったです。中屋敷さん悔しそうだったな〜 中屋敷作品好きなので、リベンジ待ってます。

 

 

劇団打「林檎」

「難しい〜〜」が正直な感想。一度見ただけでは理解できなかった。20分という短い時間だからこそ、なんの話かが早めにわかるほうがストレスなく見れるかなあと思ったり。(個人的に、抽象的な話やあいまいに進んでいく話があまり得意ではないので… これは好みだと思います。)
「誘拐されています!」と、なにが始まるんだ、と強烈に引き込まれる。観客に問いかけて、自分ごとにしてい演出は新しくて面白かった。入れ替わりの演出もすっかり騙されたし、殺陣もダイナミックで見応えあった。

人選を見た時に佐藤流司名脇役、という印象が強くて。佐藤くん、あまりにも華とカリスマ性を持ち合わせていて、センター以外で使うのが難しいそうだなあ、と勝手に思っていた。でも、みんなに見せ場があって、でも佐藤くんのカリスマ性にスポットが当たる瞬間もあって、調和がとれていたように思う。

2時間かけてじっくりみたい作品。

 

超MIX「Luda リューダ」

人選を見た時から「これはダンスとアクロバットするぞ!!」と思っていたけど、やっぱり! 動き特化で見ていてとても楽しかった。ダンスのためのライティング、メイク。そして動く度にひらひらと揺れる衣装が美しい。役者の持ち味の引き出し方が上手い。

寺山さんはコメディの印象しかなかったので、こんなに動けてシリアスな演技もできるんだ!!と驚きました。(失礼) 本田くんのスタイリッシュなダンスとアクロバットが好きなので堪能しました。二の腕を出した衣装ズルい。

虹、というテーマの打ち出しが弱い印象。だけど、虹からどう連想したらこれに行き着くのか不思議。演出家さんの頭の中を見てみたい。劇団打もそうだけど、20分の短時間の演劇をつくるにあたって「人間」という大きいテーマを扱うのはスケールが大きすぎて難しそうだと思ってしまう。それに挑戦して、仕上げることができるから売れっ子の演出家になるのだろうか。

演出の植木豪さん、ビジュアル若い!!と思ったらダンサーさんなんですね。人前に立って魅せることに慣れた人だなあと思いました。ヒプステは未履修なんですが興味出てきたので一度見てみたい。

 

劇団ズッ友 「天を推し歩く」

我が推し染谷さんが座長!贔屓目無しに優勝でした。素晴らしかった。前の二組がわりと抽象的でシリアスな世界観だったので、テーマの地図から連想されやすく、明るくキャッチーな世界観が観客の心をほぐしていたように思う。
唐橋さん、個人的に全俳優のMVP。アウトローだけど真っ直ぐで面白い元気なおじさん、こんなのみんな好きになってしまう。唐橋さん、セリフのテンポと抑揚のつけ方が上手くて、グッと引き込まれる。息子役の野口くんにもMVPをあげたい!エーステの椋役を見た時に、平均点が高くて器用な役者さんだなあと思っていた。勘当を告げられるシーン、何度見ても涙が込み上げてくる。良い親子だった。染谷さん、松井くんの顔が良い幕府の方々もチャーミングで好きになっちゃう。高橋至時転生シーンは爆笑でした。とてもいい笑顔。メガネと素顔を見れて二度美味しい。

間宮林蔵含め、多くの人が尽力して作られた日本地図がステージを覆い尽くす瞬間がとても美しかった。伊能忠敬が嬉しそうに天を見上げるその横顔があまりに穏やかで嬉しそうで、じんわり温かさが胸に広がる。シンプルに「良い作品を見た」と思える、最後に相応しい作品だった。演出の松崎さん、エーステでもそうだけど、多幸感が広がる温かい作品を作るのが上手。

 

地図のテーマから「唐橋さんを伊能忠敬に」と演出家の松崎さんに進言したのが染谷さんだと知って驚いた。常日頃染谷さんの発想力には驚かされているけれど、核となる概念が染谷さん発信だったとは。プレイヤーである染谷さんも好きだけど、今後は演出家、創造する染谷さんも見てみたい。

結果発表のとき、「やった!やった!」とぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ染谷さんがとってもかわかったです。あんなに無邪気に喜ぶなんて、本当に嬉しかったんだろうな。知らない一面を見れて嬉しかった。

 

終わりに

とっても面白い企画でした。荒牧プロデューサーの功績は大きい。荒牧くんのような、人気実力ともにトップの俳優が、演劇界を盛り上げようと働きかけるのは意味があることだと思う。出演者がしきりに荒牧くんに賞賛を送っていて、彼の人徳の高さがうかがえた。

演劇って奥深いですね。役者、演出家、観客、それぞれ「演劇」の認識が違うから、難しくもあり面白いなあと改めて感じました。

次の開催も楽しみ!夢の共演をこれからたくさん見てみたい。