ミュージカル『刀剣乱舞』静かの海のパライソ 感想

ミュージカル『刀剣乱舞』静かの海のパライソ、大千秋楽配信を見ました。

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結論から言うと名作だった。

 

全体の構成・脚本

実は刀ミュには苦手意識があった。以前見た時に演出が合わないないなあと感じてしまって、曲は好き、でも本編のお芝居はどうも…というマイナスな気持ちからスタートしたけど、今回は違和感を感じることなく見られた。多分、演者の歌唱力のレベルの高さと、歌う理由が明確に理解できたからだと思う。テーマとしてはとても難しい題材だと思うけど、それをよく2時間にまとめたなあと感服。

ただ一つ疑問があるとすればラストシーン。パライソでみんな笑い合っているのは、どの世界線なんだろう。私は一部にあまり希望を見出せなかったから、こんな幸せな形で終わるんだと驚いてしまった。「合言葉はパライソ」と信じるものは救われたのか、それとも松平信綱が考え抜いた世界なのか、刀剣男士が望む世界なのか… 個人的には浦島虎徹が夢見る世界だったらいいなあなんて思いつつ、みんなはここをどう解釈しているのか気になるところ。

 

刀剣男士の役割とは

正しい歴史とはなんなのか。正しい歴史のためなら、目の前の不都合に目を瞑りなんでもしていいのか。これはどの刀剣乱舞シリーズにも共通する、刀剣男士のジレンマだと思う。ここがとても強く描かれていて胸を締め付けられた。時間遡行軍を倒すことが役目じゃなく、歴史を守ることが役目。そのためなら人を騙してもいいし、見殺しにしてもいいのか。良心と責任の狭間で揺らぐ6振りを見ているのはとてもとても辛かった。刀剣男士の真髄を知っている鶴丸国永のスパルタ新人研修だったんだろうか。それにしては過酷すぎるけど…笑

あとは「戦をしてはならない」と松平信綱鶴丸に語るシーンが印象的。言うまでもなく刀は戦のための道具。松平信綱はわかっていないとしても、それを刀の前で言っちゃうのか〜と。でもこの本丸の刀たちはそれを理解してさらに強くなっていくんだと思う。うちの本丸と絶対に演練で当たってほしくない。

 

鶴丸国永と岡宮来夢くん

鶴丸推しにとって情緒かき乱される今作。鶴丸、お疲れ様でした。
天草四郎鶴丸国永、二人が指導者として対比されている。周りに担ぎ上げられ何も考えられていない天草四郎と、周りと協力しながら考えながら指揮を取る鶴丸。どちらの指導者が導いたとしても、3万7000人が死ぬことには変わりない。だけどその後が全く違うものになるんだと思う。
そして今作はあらゆるメディアミックスでも見たことのない鶴丸国永ばかりだったように思う。いつも飄々としている鶴丸のいっぱいいっぱいなところが新鮮だった。鶴丸って最強の参謀というか二番手が一番得意なんじゃないかという印象があって。だからこそ一番前で奮闘する鶴丸に心打たれたのかもしれない。
印象的だったのは豊前江が松井江にかけるセリフ「おれ、両手空いてっからさ」。両手空いてるから、抱えてるもの持ってあげられるよ、というセリフが鶴丸にぶっ刺さるんじゃないかなあ。鶴丸って本体を常に持っている。ゆえにいつも手放せない責任みたいなものがあるように感じてしまって、すごく泣けた。
鶴丸はいろんなものを抱えてもうこれ以上持てないと苦しんでいたところを、大倶利伽羅はじめ頼れる部隊のみんなに少しずつ預けて行って、なんとか任務をやり切れて本当によかったねと、人選に間違いはなかったね、と褒めてあげたい。ますます鶴丸国永が好きになった。

そして岡宮くん。いや〜圧巻。岡宮くんに背負わせるには重すぎる役割と脚本だと思うけど、見事にやり遂げていて脱帽。歌の安定感はもちろん、表情と声色の使い方がとても上手。飄々としたところ、辛さを隠しながら割り切ろうともがくところ、大倶利伽羅だけに見せる弱いところ、全てにおいて目が離せなかった。一番は三日月に向かって叫ぶシーン。あんな迫力見せつけられたらもうそりゃ泣いちゃう… そこからのカラッとした切り替えと弱さの流れもとても良くて、舞台が締まっていた。ああいうキメのシーンを、観客の期待以上のクオリティで魅せられるところが、若くしてこのポジションにいる所以だと思う。鶴丸同様、期待以上の驚きをくれる。これから岡宮くん演じる鶴丸が、どんなふうに三日月と対峙していくか楽しみ。

5振りについて

倶利伽羅

倶利伽羅もお疲れ様でした。ひたすらに鶴丸を信じてサポートに徹している姿がもう激アツ。口数は多くないからこその重みのある一言にハッとさせられる。 
牧島くんの低音の安定感がとても好き。鶴丸と二人で歌う『静かの海』は二人の関係性と覚悟が伝わってくる名シーンだと思う。

浦島虎徹

浦島の無邪気さが物語のしんどさをより際立てていた。辛かっただろうけど、折れることなく前向きに頑張ろうとする姿がかっこよくて、うちの本丸の浦島も育てようと心に決めたのでした。糸川くん、お名前は知っていたのだけどとてもいいお芝居をしていて他の作品も見てみたくなった。

日向正宗

浦島と一緒に無邪気さもありつつ聡明さもあって、辛い物語の中の清涼剤となる良い癒しキャラ。刀ミュ短刀が少ないけれど、今後ライブとかでどんなポジションになるんだろう。あとは声の再現率が高くてびっくり。

豊前

とにかく気持ちのいい男!年上でも「つるさん」「くりさん」「えもさん」と良い意味で気安くコミュニケーションとれるところが魅力。豊前江がみんなの間を取り持ってくれたから、この部隊はうまく行ったのだと思う。そして二部の素敵な腹筋… 狡すぎます…

松井江

超絶過酷な任務お疲れ様… 最後鶴丸を殴ったところ、めちゃめちゃ好きだった。観客も同じ気持ちだったと思う。笹森くんの持つ品の良さがキャラクターと衣装に合っていて素敵でした。

 

二部

パライソ、全編通して曲が好き。どれも良曲でサントラ早くほしい。
今回の6振りはみんなダンスも歌もクオリティが高くて見応えがある。このレベルでパフォーマンスできないとこの世界では通用しないと思うと、ほんとに厳しい世界だと痛感する。舞台俳優がこんなに歌って踊れたら、ジャニーズの若手、特に舞台で頑張ろうとしてる子はとんでもない敵だろうなあと。勝手に心配してしまう。そちらも好きだし、頑張って欲しいのだけどね。
あとなんだろうな、随所にジャニーズ演出を感じた笑 それは自分がジャニーズの部隊を見続けているからだとは思うけど、変面、ダブルダッチ、十字架になって落ちる振り付け、太鼓… うーん既視感… だからこそすんなり見られるのもあるけど、アッと心惹かれる驚きはないかなあ。せっかくポテンシャル高くて面白い演者が揃うのだから、なにか仕掛けがほしいと厚かましいことを思ったり。そんなこんな言ってますけど、二部は大好きでエンドレスで何回も見てます。


岡宮くん推しなのでどうしても岡宮くんをみてしまうんだけど、彼とても綺麗に躍るんですよ… 癖が無くてしなやかで、それでいて表情管理も完璧。どこまで魅せてくれるの… そして衣装が優勝でした… 美しい背中… 以前鍛えていると言っていたけど、これくらいのしなやかで綺麗な体が好きだなあと思う。

 

 

伊達双騎発表

最後の最後にとんでもない発表が! 鶴丸単騎はいつかあるんじゃないかと思っていたけど、伊達で出陣するのは予想外。過去の二人の物語っていう設定も斬新で楽しみだなあ。

 

 

終わりに

思った以上にハマってしまって、配信終了が惜しい。配信終了ギリギリまで見ます。あとは12月8日はテレビ出陣もあるのでそれでロスを埋めていきたい。私の刀ミュへの苦手意識を一気にぶっ飛ばしてくれる、大好きな作品になりました。1年8ヶ月にも及ぶ長期任務お疲れ様でした!